はじめに
南種子町立平山小学校では、e-kakashiを活用した出前授業が継続的に行われています。夏に実施した臨場での授業、10月のオンライン臨時授業を経て、2024年11月、再び臨場での出前授業が実施されました。
単なる体験にとどまらず、データを根拠に考え、判断し、行動する力が、児童たちの中に着実に育ち始めていることが感じられる機会となりました。
<過去の記事>
「宇宙の町」南種子町の次なる挑戦 e-kakashiで進める農業の高度化と次世代教育
現場で確かめ、考える
11月の出前授業は、学校の温室で体験しながら考える学習と教室での学習の二部構成で行われました。講師として、e-kakashiを活用した科学的な栽培を実践しているシーズファームの方々にも平山小学校にお越しいただきました。
<過去の記事>
フルーツパプリカ栽培で反収前年比125%を達成!蓄積した知見を自治体にも還元

温室では、児童たちが学校で栽培しているフルーツパプリカを観察し、シーズファームが日々の栽培で大切にしている判断の考え方をもとに、収穫量を増やすためのヒントを探しました。児童たちは積極的に質問し、意欲的に学習に取り組む様子が見られました。
なぜ落とすのか、なぜ残すのか。判断の理由を現場で紐解く
温室では、パプリカ栽培における基本的な考え方について、生産者から説明がありました。
最初につく実は、株の生長を優先するためにあえて落とすこと。
枝が込み合うと光が届かず、実が小さくなるため、間引きが必要になること。
一つひとつの作業には、必ず理由があります。児童たちは実際に枝や葉に触れながら、「どれを残すか」「どれを取るか」を考え、自分たちで判断していきました。作業手順をなぞるのではなく、理由を理解したうえで選択する。その姿から、学びの質が一段階深まっていることが感じられました。
データを根拠に 行動が変わる瞬間
授業の中盤では、e-kakashiのデータを活用した学びが行われました。土壌水分のデータを確認すると、水分が高すぎる状態であることが分かりました。このままでは根が十分に張れない可能性があるため、その場で水はけを改善する作業を行いました。
見る、触るといった感覚的な理解に、データという客観的な根拠が加わることで、「なぜこの作業が必要なのか」が明確になります。この出前授業で、児童たちは正解を一方的に教えられているわけではありません。また、作業手順を覚えることが目的でもありません。e-kakashiのデータをもとに、なぜこの状態になっているのかを考え、次に何をすべきかを自分たちで判断していきます。授業は、いわばデータを使って思考力を鍛えるトレーニングのような時間となりました。
教室に戻り 体験を学びに変える
温室での学びを終えた後、児童たちは教室に戻り、振り返りの時間を持ちました。ほ場での判断や作業を、そのまま体験で終わらせないための時間です。
水やりの方法については、e-kakashiのデータを見ながら土壌水分の数値を確認し、どの程度まで下がったら潅水を行うのかを、理由とともに整理していきました。また、温度管理についても、朝の急激な温度上昇を避けるための換気の重要性や、今後の気象条件を見据えた対応について話がありました。
児童たちは、現場で感じたことを思い返しながら、データと照らし合わせて理解を深めていきました。体験を振り返り、言葉にし、考えを整理する。このプロセスを通して、学びは一過性の経験ではなく、自分たちの判断として定着していきます。

学びが地域と未来へ広がる
教室での振り返りが進む中で、児童たちの関心は、自分たちの栽培だけでなく、地域全体へと広がっていきました。「南種子町でフルーツパプリカを広めるにはどうすればよいか」という質問も、児童から自然に出されました。
どのようにすれば品質を安定させられるのか。継続して栽培するためには、どんな工夫が必要なのか。学びは、作物の管理を超えて、地域の農業や将来を考える視点へと発展していきました。
データを活用して課題を捉え、解決の道筋を考える。その経験は、農業に限らず、これから先どの分野に進んだとしても、児童たちの思考の土台となっていきます。
学校と地域の生産者がデータを共通言語とすることで、無理のない形で学びが進められていました。体験を一過性のイベントで終わらせないための仕組みが、学校教育の中で着実に形になりつつあります。
おわりに
平山小学校での取り組みは、学校教育と地域をつなぎ、農業DXを実装していくための一つのモデルです。グリーンは、e-kakashiによる科学的な農業を基盤に、自治体の農業DXを多角的に支援し、地域創生に貢献していきます。
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