CASE STUDY導入事例

 

はじめに ~株式会社たがみと熊野米~ 

株式会社たがみは、和歌山県田辺市に位置する、精米業で昭和19年に創業して以来80年の歴史を誇るお米屋さんです。現在は1次産業であるお米の生産から3次産業である加工・流通まで事業を広げるなど、6次産業化にも積極的に取り組んでおり、2020年にはe-kakashiを導入し、栽培のスマート化にも挑戦されています。

生産している熊野米とは「ヒカリ新世紀」の新品種で、味が良いうえに短稈(たんかん)で倒れにくく、台風の多い熊野地域の栽培に適した品種です。さらに梅の調味液や給食の残飯などを肥料に使用しており、地産地消にも貢献。現在熊野米は、安心安全かつ優れた県産品を和歌山らしさや和歌山ならではの視点で推奨する「プレミア和歌山」に選ばれています。※詳細はURLをご覧ください。

今回の記事では株式会社たがみの代表取締役であり、熊野米プロジェクトの運営統括責任者を務める田上雅人さんにお話を伺いました。

 

tagami_vol2_smiling

株式会社たがみ 代表取締役

田上雅人(たがみ まさと)さん

1944年から続く米穀販売店で米穀販売業を営む。熊野米プロジェクトを牽引し、2010年に国から「農商工連携事業」として認証を受ける。

2015年には農業法人として米の生産事業を開始。

2021年に田辺市内のカレー店を前のオーナーより引継ぎカレー事業部として経営を開始。

2023年には田辺観光協会会長に就任。農業のみならず田辺の観光業発展に尽力している。

 

和歌山県産の寿司を作りたい 熊野米プロジェクトの始まり 

熊野米プロジェクトをはじめるきっかけは、米を販売する中で県内産のお米がなかなか出回っていないという気づきからだったそうです。

 

田上さん「今から16~17年前に和歌山はマグロもあり、めはり寿司などもお米を使った食品がたくさんあるのに地元のお米がなかなか出回っていないと気づきました。そこで、仲間と一度米作りをしてみたのです。当時は着色米なども多くまじっていましたが、仲間と食べたとき本当においしかったことを覚えています。和歌山県には醤油発祥と言われる地があることに加え、那智勝浦は全国有数のマグロの水揚げを誇ります。和歌山県産の米、醤油、マグロがあれば、和歌山県産の最高のマグロ丼や寿司ができるのではないかと思い、まずは地元の米を見直そうと協力農家との連携を始めたことが熊野米プロジェクト発足のきっかけになりました。」

スライド1



 

 

 

 

写真:那智勝浦のマグロ

 

 

熊野米プロジェクトは2010年には国の農商工連携事業として認定を受けました。

熊野米の栽培では、梅干しの製造過程で大量に発生し、廃棄が課題となっている梅の調味液を有効活用し、雑草を抑制することで化学肥料を減らす取り組みに着手しました。このほか、近隣の給食の残渣、梅の調味液を浄化する時に発生する汚泥や種なし梅の種などを堆肥化し利用することで、地域循環型の農業を体現しています。また、収穫されたお米は決まった金額で株式会社たがみとして買い取ることで、協力農家も儲かる仕組み作りを行っています。

しかし、プロジェクトを発足した当初は協力農家のみで熊野米を生産していましたが、お米の価値は自分で作ってみなければわからないと思い、10年前から生産に自身も携わるようになったそうです。

田上さん「最初の頃は全く収量もなくて、全然ダメでした。この10年間で規模が変化しているので、一概に収量を比較できないところもありますが、単位面積あたりの収量自体もだんだんと増えてきて、一昨年ぐらいからようやく豊作と言えるようになってきました。」

 

たがみ

 

e-kakashiの導入 データから見えてきたお米作りへの変化

より良い米作りを目指すためには栽培のスマート化が必要だと考え、2020年の先駆的産業技術研究開発支援事業に応募しました。みごと採択を受けて、e-kakashiの導入にいたりました。まずは自身の田んぼの管理から開始しましたが、現在は契約農家さんのほ場にもe-kakashiを設置し、田上さんの手元で育苗から収穫まで一気通貫した環境データが確認できるようになっています。

 

e-kakashiを導入して3年、お米作りの変化を田上さんにインタビューしました。

代表取締役 田上雅人さん

「e-kakashiでよく使うのは積算温度に基づく開花予測や収穫予測ですね。開花予測はアプリを見ればいつ頃開花するのかわかるので、開花前の適切な時期に防除ができるし、防除回数も減らすことができました。収穫適期予測を使うようになってから、刈り遅れがなくなり割れ米がぐっと少なくなり、e-kakashi導入前と品質の違いを実感しています。気温や湿度も毎年違う中で、自分も契約農家さんも『そろそろ収穫かな』と思った時にデータを見ると積算温度に達していなくて、ベストな収穫時期がまだまだ先だったということはよくあります。e-kakashiのデータを見ればあとどのぐらいで収穫ができるかもわかるので助かっています。」

 

また、田上さんはコンバイン*¹が取得する収穫時のデータと合わせることで、次の担い手育成も考えるようになったと言います。

「コンバインは収穫時に、収穫したお米のアミロースや水分データや収量を記録してくれています。この収穫時のデータとe-kakashiのデータを合わせることで、どんな環境でどんな米がとれるのかを生産記録として残すことができるようになりました。次に農業をやりたいと言う子が出てきた時にデータを渡すことができるし、買取や販売をうちでやればお米できちんと儲けられる仕組みを作って行くことができます。せっかくだからデータで地域を盛り上げていくことができたらと思っています。」

 

*¹刈り取り機と脱穀機を合わせた収穫機械のこと

1659507382608

 

熊野三山への奉納 地域に根付く“熊野米”

2023年11月23日、熊野三山(熊野大社、熊野那智大社、熊野春日大社)では新嘗祭(にいなめさい)が行われました。新嘗祭とは、その年の収穫を感謝して新穀を神様にお供えし、来年の豊穣を願う行事です。株式会社たがみでは熊野三山すべてに熊野米の新米を奉納しています。

新嘗祭終了後には宮司からの依頼で、田上さんが奉納した熊野米について紹介しました。熊野米を通じた地域循環型農業への思いや、田辺観光協会会長として町全体の観光や産業への思いを伝える田上さんに、一緒に奉納した皆様からも活動へのたくさんの質問が寄せられました。


スライド3

スライド2 スライド1-1

 

6次産業を実現する田上さんがみるこれから

現在では、熊野米の栽培面積は協力農家さんと合わせ40ヘクタールにもおよびます。今後の熊野米の展望について田上さんからお話を聞きました。

 

田上さん「遊休農地を熊野米の栽培に活用できないか相談を受けることも多く、実際に現場を見に行って、慎重に規模を拡大しています。特に一定の温度の水がひけるか、きちんと日射量が確保できるかという2点は選ぶうえで大事にしています。また、協力農家さんはこれまで高齢な方も多かったですが、決まった値段で買い取るようになってからは安心して息子さんに継がせられると、二世代にわたってお世話になっている農家さんもいます。価値のあるものを正しい金額で買い取って売るという仕組み作りをきちんとすることで人手不足や耕作放棄地の増加など地域の課題の解決に繋がると考えています。」

DSC00954

さいごに

お米の販売だけでなく、熊野米生産から加工・流通まで手がける田上さんですが、2021年第三者継承として田辺市内のカレー屋さんを継承し、カレー事業部を開始しました。

田上さん自身も、毎日ではないものの店頭にたち、熊野米の消費まで見届けています。

6次産業や地域循環型農業を体現する田上さんの活動や詳細は下記URLからぜひご覧ください。

 

・田上さんの熊野米のご購入はこちら

https://tagami-rice.stores.jp/

・熊野米プロジェクトの詳細はこちら

http://kumanomai.com/

・熊野米プロジェクトFacebookはこちら

https://www.facebook.com/kumanomai?fref=nf&ref=embed_page

・熊野米について

https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/130600/130651/corection/kumanomai.html

・6次産業化事業として取り組む「カレーれんが屋」

https://www.kome83.com/rengaya/

他の導入事例

お気軽にお問い合わせくださいe-kakashiを購入したい方、販売したい方、
資料請求について承っております。


        ページトップへ