CASE STUDY導入事例

コロンビアでのコメ生産性の向上を支援

 農業IoTソリューション「e-kakashi」を用いた国際熱帯農業センター(以下、CIAT)の実証実験が2017年6月からコロンビアで開始されました。勘と経験による栽培から、データに基づく科学的農業へのシフトをめざし、ソフトバンクグループのPSソリューションズ株式会社(以下、PSソリューションズ)が開発したe-kakashiは、圃場から環境情報や作物の生育情報を収集し、クラウドで分析・可視化して農業の意思決定やリスクヘッジなどに利用できるソリューションです。日立は農業フィールドに適したセンサーネットワークの機器開発からクラウド環境の提供までトータルに支援しています。国内では、すでに多くの農業現場でe-kakashiの運用が進んでいます。
 現在、コロンビアにおいて、コメは1人あたりの年間消費量が40kgを超え、一年生作物の栽培面積の大半を占める重要作物となっています。コメの需要が高まる一方、気候変動などの影響、灌漑水や施肥成分の利用効率が低いことで生産コストも高く、作付面積や収穫量が伸び悩み、コメ消費の自給率に課題を抱えていました。また、2012年に発効された米国との自由貿易協定(FTA)で、現在80%の関税が段階的に撤廃され、2030年には米国産コメの完全輸入自由化が始まるため、輸入米増加にともなう国内でのコメ生産の縮小を防ぎ、国際競争力のある持続可能な農業を確立する必要がありました。
 こうした背景から、コロンビアの国際研究機関であるCIATとPSソリューションズは、国際競争力のある持続可能な農業の実現に向けた国際共同研究プロジェクトの一環として、現地でe-kakashiの実証実験を開始。日立はコロンビアへのe-kakashi導入に際しても、IoTデバイスやクラウドなどのデータ収集・蓄積・管理環境を総合的に提供し、安定したサービスが提供できる技術支援を行いました。

日本の農業IoTをグローバルに展開

 今回の実証実験では海外でe-kakashiを活用し、灌漑や施肥に加え、作業管理の低減や精密な栽培管理のためのモニタリングを行いました。今後のプロジェクトでは新品種の開発に取り組み、開発された新品種の導入と省資源型稲作の実現による生産性の向上をめざしていきます。また将来的には、コロンビア国内での栽培環境が異なる地方(カリ地方、イバゲ地方、サルダーニャ地方など)でも信頼できるデータの収集とアプリケーションの開発などを進め、農業のIoT化を促進させることを目標としています。
環太平洋連携協定(TPP)や経済連携協定(EPA)などでも農業のグローバル化が求められるなか、精緻なデータの集積と分析など科学的な根拠によって栽培の効率化や高品質化を図る手法が欠かせないものになっていくと考えています。CIAT、PSソリューションズ、日立は、今後も継続的に研究開発を進め、農業IoTの発展に取り組んでいきます。

 

※日立製作所制作 はいたっく 2017年10月号掲載

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