VISIONビジョン

「e-kakashi」は農業を科学的に支援するサービスです。
ほ場で取得した大量の栽培・環境データを見える化するだけではなく、今どんなリスクがあり、
どう対処すべきか最適な生育環境へナビゲートします。
「e-kakashi」に対する想いや、開発にまつわる話をご紹介します。

開発者の声・戸上 崇

技術の視点ではなく、
植物の視点で「何が必要か」を
考える

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植物目線にこだわって開発したからこそ農業の現場で受け入れられている

e-kakashiの開発でもっともこだわったのは「植物目線」なんです。そもそもe-kakashiはセンサー技術、通信技術などのかたまりです。いままでそういった技術がなぜ農業の現場で使われてこなかったかというと、それは「植物目線」がなかったからだと思います。ここで言う「植物目線」というのは、一般的に、植物の栽培では水が大事です。

そこで、なぜ水が大事なのか、水の量なのか、質なのか。量だとしたらどれくらいの量なのか。そこまで考えぬくということです。植物になぜ水が必要か、光合成のためでもありますし、根から養分を吸いあげて運ぶためにも必要です。

また身体の温度を保つためにも必要です。そこで、植物には水が大事といったとき、何のために水が大事かを考えるんです。その視点を欠かさないことがe-kakashiのポイントだと言えます。もう一つ、農業である以上、植物目線と人間の視点が入ってきます。作物を大きくしたい、甘くしたい、早く収穫したいなど様々な要望がかかわってきます。こういった栽培手法について、いままで農家さんは経験とカンでやってきています。しかし、学問の世界では植物生理学、植物病理学などというジャンルがあって、一定の知見は既にあったんです。

科学的根拠と経験と勘を融合させて環境データを用いて比較して、よりエンドユーザーに使いやすい形で提供していく。そこでe-kakashiが役立つと良いと思っています。

栽培データ以外のデータもどん欲に吸収し、いまのe-kakashiでは想像もできないものに育って欲しい

いま、一部の農家さんからは「e-kakashiはやりすぎじゃないか」と言われることがあります。すごいとは思うけれど、そこまでのデータが必要なのか?というんです。でも個人的にはまだまだ足りないと思っているんです。

例えば、温度でも、作物の栽培上、積算温度というものはとても大事な指標です。でも、温度と言っても気温もあれば土壌の温度もあります。水田なら水温もある。気温でも地面に近いところか地上50cmの温度か、土壌の温度も地表の温度か地下15cmの温度かなど、意味が違う。それをすべてデータ化していく。

そしてそのデータをわかりやすく分析して、見える化していく。大事なことは「いまこんなことができるから、やりましょう」ではなくて「こうしなければならないから、それができるようにしましょう」なんです。

これから取り組んでいきたいのは、いま取れているデータの精緻化はもちろん、そこで行われた人間の作業記録であり、収穫後の作物の出来栄えのデータなども栽培データと同様に取り込んで分析していくことです。栽培データと作物のデータ、人間の作業記録は別々のものになっていて、いままで統合されていなかったんです。さらに、土壌のデータを集めて分析、反映させていきたい。土壌といってもそこに含まれる微生物※まで含めてデータ化しないと意味が無い。これは大変なことですが、農業の将来を考えたら欠かせないことだと思います。その結果、5年後、10年後には、いまの私が想像もしていないようなe-kakashiになっていると思います。

PROFILE

戸上 崇 ソフトバンク株式会社 e-kakashi推進課 課長、博士(学術)
オーストラリア ニューサウスウェルズ州 公立チャールズスチュアート大学卒(学士(応用科学))その後、国立三重大学 大学院の修士課程に進学し、農業ICT分野の研究に携わる。2012年 同大学院博士課程にて、農業現場におけるセンサーネットワークおよび情報の利活用に関わる研究で博士号(学術)を取得。2012年12月日本学術会議CIGR分科会でHonorable mentionを受賞。2013年1月にソフトバンクモバイル(株)(現ソフトバンク(株))に入社以降、本プロジェクトの技術開発をリード。

開発者の声・山本 恭輔

e-kakashiのハイブリッドAIは
植物生理学を応用し、
少ないデータでも
有意義な予測を可能にする

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情報科学技術に植物生理学のエッセンスを加える

近年、AIやディープラーニングがバズワードになっていますが、(ご多分に漏れず)農学の世界でも様々な用途でそういった技術が使われ始めています。しかしながら、個人的には、情報科学の世界で培われてきた技術をそのまま農学の世界に適用することは無理があると思っています。理由は色々ありますが、一番は農業はデータが集まりにくい、という点です。とりわけ植物の生育データは、対象が生き物であることから、たった一件のデータの収集に一年以上かかってしまうこともあります。一方、例えばディープラーニングが得意とする画像解析の世界では、何百万件といった規模のデータがすでに用意されていますし、それだけのデータがあって初めてディープラーニングの真価が発揮できると言われています。少ないデータでいかに工夫をして新しい知見を見出すか、そこが農学におけるAI利用の課題だと思っています。

e-kakashiでは、AIなどの情報科学技術に植物生理学のエッセンス、つまり既知の事実に関する情報を取り入れることで、少ないデータでも有意義な予測を生み出すことができる分析技術を開発しています。この分析技術を使えば、ハウスの栽培環境データと生育データなどから、例えば収量や収益を増加させるための環境制御方法をご提案できます。先に説明したように、この分析技術には何十年分といった大量の過去データは必要なく、導入一年目からその機能を実感できます。また、e-kakashiの分析技術は、大量のセンサデータ、そして新たに発表される植物生理に関する知見を取り入れながら、日々進化しています。

農業情報プラットフォームを目指して

e-kakashiが目指しているのは、ハードウェアやソフトウェアのサービサーではありません。様々なレイヤーの農業者同士をつなぐプラットフォーマーです。その第一弾として、まずは「栽培技術プラットフォーム」の構築を目指しています。栽培現場では、栽培技術に関する情報伝達があらゆる形で分散して存在しています。e-kakashiのプラットフォームはそれらを一か所に集約、そして様々なデータやその分析結果を付与することで情報伝達を円滑化し、農業者の皆さまに新たな価値をご提供します。

もちろん、e-kakashiが目指しているのは栽培技術だけのプラットフォームではありません。生産者の作業履歴や植物の生育情報、資材の売り買いや生産物の流通、販売など、農業に関わる様々な取引を円滑化し、その相互作用から生まれる新たな価値を提供する「農業情報プラットフォーム」を目指して、日々研究開発に取り組んでいます。

PROFILE

山本 恭輔 ソフトバンク株式会社 e-kakashi推進課 博士(農学)
三重大学大学院、東京大学大学院にて、画像解析と機械学習を使った植物の高速フェノタイピングに関する研究に携わる。2015年、東京大学大学院にて農学博士号を取得。同年より、e-kakashiの研究開発を担当。
- 論文業績
- Yamamoto, K. Distillation of crop models to learn plant physiology theories using machine learning. PLoS One 14, e0217075 (2019).
- Yamamoto, K., Togami, T. & Yamaguchi, N. Super-Resolution of Plant Disease Images for the Acceleration of Image-based Phenotyping and Vigor Diagnosis in Agriculture. Sensors 17, 2557 (2017).
- Yamamoto, K., Togami, T., Yamaguchi, N. & Ninomiya, S. Machine Learning-Based Calibration of Low-Cost Air Temperature Sensors Using Environmental Data. Sensors 17, 1290 (2017).
- Yamamoto, K., Guo, W. & Ninomiya, S. Node Detection and Internode Length Estimation of Tomato Seedlings Based on Image Analysis and Machine Learning. Sensors 16, 1044 (2016).
- Yamamoto, K. et al. Strawberry cultivar identification and quality evaluation on the basis of multiple fruit appearance features. Comput. Electron. Agric. 110, 233–240 (2015).
- Yamamoto, K., Guo, W., Yoshioka, Y. & Ninomiya, S. On Plant Detection of Intact Tomato Fruits Using Image Analysis and Machine Learning Methods. Sensors 14, 12191–12206 (2014).

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