NEWSニュース

<NEWS トップへ戻る

2020.11.17

小田原さんのスマート稲作日記~総括編~ まとめ読み

e-kakashiはデータの見える化だけでなく、具体的な対処法を提示するナビゲーション機能「ekレシピ」が最大の特徴です。「ekレシピ」構築のため、研究にご協力いただいている「小田原悦夫」さんの日記~総括編~を、まとめてご紹介します。

10月に無事今年度の稲作栽培がすべて終わりました。また、私が「e-kakashi」設置による実証試験を実施してから、3年が経過しました。そこで今回の日記では、この3年間の実証試験の主な成果を総括としてご紹介いたします。

 

図1)主な耕種概要と作業ステージ到達日

 

図2)3年間の日平均気温経過図

 

図3)3年間の生育調査結果概要

 

【実証試験概要】
浸種・催芽、育苗期間、本田栽培期間の稲の全ての栽培期間を通じて「e-kakashi」によるデータを収集し、数値の確認と積算値の蓄積を実施しました。また、稲の生育進捗に合致した管理に努めて、生育ステージ到達の理想値を探っています。3年間を通じ、田植え日は5月21日と同一日になりましたが、その後の気象経過は好天が続き初期生育が良好な年もありましたが、低温傾向が続いて分げつが進まない年がありました。生育は天候に左右されやすいのですが、その生育に対して次にどうした管理をするのかを、データを見ながら判断できるのが「e-kakashi」の魅力です。理想の生育目標に近づける管理を実施する事で、その後の管理が楽に進めることが出来るようになります。
私の管理の目標は以下の2点に集約されます。
 ① 初期生育を活発にして分げつを促し、早期に茎数を確保する
 ② 発生している茎を丈夫な太い茎に仕上げる
生育中期は、どうしても天候の影響によって有効茎決定日の遅れや進みが出ますが、これだけ3年間の生育期間中の天候に極端な違いがあっても、出穂日は3年間を通して8月1日と同一日にできたのも、生育を把握したうえで栽培管理を進められたからだと思われます。


【令和2年度の特徴】
一つ目の特徴は、倒伏面積の拡大です。これは6月末から7月いっぱい続いた曇天に起因しています。有効茎が確保されたので中干し作業に入りましたが、降雨の影響で中干しの効果が出ないままに分げつが続いてしまいました。これにより、本来は無効となるはずだった弱小茎まで穂になってしまったために、株全体の茎が細くなってしまったことと、草丈が長くなってしまったことが重なったからです。
もう一つの特徴も曇天が起因しています。それは「いもち病発症」です。ここ十数年間いもち病の発症が無かったことに油断もあったかも知れませんが、7月の降雨の間に発生していた葉いもち病に気付かない農家や、さらに穂いもち病に進展してからはじめて発症に気付いた農家もいらっしゃいました。防除の適期を逃してしまった農家においては、穂首・枝梗いもち病によるカラ籾や未熟米の増加による減収が散見されたようです。


【実証圃場の収量と地域の概況(3年間比較)】
10月30日に農林水産省より、10月15日現在の令和2年産水稲の予想収穫量の概要が発表されました。全国ベースでは作況「99」の平年並みで、西日本では日照不足による生育不良等の影響で「不良・やや不良」でしたが、北海道・東北・北陸は生育が順調であったことから「やや良・良」との発表になりました。

 

図4)東北農政局公表の3年間の作柄

 

図5)実証試験圃場の3年間の実収量

 

図6)実証試験圃場の標準株解体調査結果

※標準株解体調査は、生育調査での平均茎数と同数の株を標準株として採取し、枝梗数、粒数、穂長、節間長等の計測と一株全体の各重量を測定して圃場全体の株数を換算して算出した換算収量。

 

図7)実証圃場と地域収量との差

地域収量よりも、平均して1割程度多く収穫できました。

 

【令和2年産の作柄考察】
令和2年産の稲の生育状況を振り返ると、田植え後は比較的好天だったため初期生育は順調に経過し、分げつが活発で茎数も早めに確保されましたが、6月の下旬からの曇天続きと降雨により、中干し効果が発揮されずに草丈伸長の助長と弱小茎の発生に繋がってしまいました。更に、曇天の影響は久しぶりの「いもち病」の発症にも繋がってしまい、この事が結果的には倒伏面積の拡大や、罹病によって減収に繋がってしまった農家も少なからずおり、農林水産省で発表されているような「豊作感」が薄い年となりました。実際に地元JA(以前の私の勤務先)に聞いてみると、JAで集荷する俵数が想定よりも伸びておらず、逆に計画の数量を下回っている地域も発生しているようで、地域差や個人差が大きく発生したように感じます。個人差は、個人の管理の違いによって発生するものですが、地域差はその地域の土壌特性がその年の天候経過に合っていたか否かによるものと推測され、黒ボク土壌と粘土質土壌等の違いによって、稲の生育に大きな影響が出る事がわかった一年になりました。


【『e-kakashi』ができる事】
稲に限らず作物を育てる難しさは、その年の天候によって収穫量や品質が左右される事だと思います。実証試験を実施した3年間でも、ここ2年は安定した結果となりましが、H30年は作柄が著しく低下しており、平均的な数値を比べているだけでこれだけの差が発生してくるのですから、個人によってはもっと大きな変動があると推察されます。
経営の形態~法人・個人、専業・兼業、大規模・小規模等~の違いにより、取組み方は変わってくることだと思いますが、収量や品質の差が直接所得面に反映される事なので、安定した成果が望まれます。
「e-kakashi」は、圃場での気温、水温、地温、湿度、照度などをリアルタイムに測定し、その測定値をすぐ確認できる他、そのデータをすべて蓄積してくれます。そのデータを活用して生育ステージの到達日を予測して、自分の稲の生育進捗が順調なのか等を知ることができます。そうすると、次の生育ステージまでへの理想的な管理を実施できるので、天候の経過に左右されない稲づくりが出来ると考えられます。
「ekレシピ」は、こうした指標数値を基にした栽培知見を合わせることで、経験の少ない農家にも、次の対処方法となる具体的な管理方法を示す、ナビゲーション機能があります。この機能の精緻化を、現地実証を通じてお手伝いさせて頂いています。
何はともあれ、稲作指導歴が長かった私としては、すべての肥培管理を完璧にこなす事は容易でありませんが、稲作栽培期間中のポイント部分をしっかり把握して、その時だけはしっかり見届けて管理することで、結果は付いて来ると考えています。是非「稲づくり」を楽しんでいただければと思います。
約半年間、日記をお読みくださいましてありがとうございました。


提供:ek認定スマート農業アドバイザー(稲作) 小田原悦夫
実証地:秋田県横手市(県南部)

 

「小田原さんのスマート稲作日記」全15話はe-kakashiのFacebookでお読みいただけます。

https://www.facebook.com/ekakashi.jp

育苗編 part 1

育苗編 part 2

育苗編 part 3

田植え編

活着編

除草編

分けつ編 part 1

分けつ編 part 2

幼穂形成期編

穂肥編

出穂直前編

カメムシ防除編

登熟・いもち病編

総括編~前編~

総括編~後編~

 

NEWSトップへ戻る

お気軽にお問い合わせくださいe-kakashiを購入したい方、販売したい方、
資料請求について承っております。


        ページトップへ