はじめに
鹿児島県の南種子町は、種子島宇宙センターを擁し、「宇宙の町」として広く知られています。その先進性を象徴するように、いま町では、地域が一体となってテクノロジーを活用した新たな農業の挑戦が始まっています。
南種子町がテクノロジーの力で農業の収益性向上、技術継承、そして次世代教育を加速
背景には、新規就農者の確保や後継者不足といった地域農業の課題があります。こうした状況に対し、町役場と地域の農家の皆様が連携し、2025年7月から農業情報プラットフォーム「e-kakashi」の導入が始まりました。
このプロジェクトでは、農業の収益性向上、熟練技術の継承、そして次世代教育の推進という3つのテーマを掲げ、環境データの活用を通じて技術のデジタル化・体系化を進めながら、科学的な農業の実践による生産性と品質の向上を目指しています。さらに、地域の学校現場とも連携し、次世代への実践的なICT教育にも力を入れています。
「e-kakashi」とともに目指す「儲かる農業」
「e-kakashi」は環境データや生育状況を詳細に計測・収集し、多角的に分析。その結果、農家さんは現状の状況や改善ポイントを容易に把握でき、「今、何をするべきか」という栽培判断に役立てることができます。これにより、科学的で安定的な栽培計画が可能となり、収量と品質向上を実現し、農業経営の「儲かる」基盤を確実に強化します。また、病気や害虫の兆候を早期に検知し対策することで、リスクを抑え、安定した生産を可能にします。
勉強会では、スマートフォンの操作に不安を抱えていた高齢の農家さんもスムーズにアプリをインストールでき、自分の圃場の環境データがすぐに見られることに、「こんなに簡単にデータが使えるのか」と感心する声が聞かれました。
機器の導入と共に行った勉強会の風景
地域への期待を語った町長との面会
2025年7月14日、南種子町の小園町長を訪問。設置直後のマンゴーほ場の簡易分析結果をお見せし、導入してすぐに栽培環境の改善に活用できる点に強い関心を示していただけました。あわせて、地域の教育とも連携した小学校での出前授業のプログラムについても、農業と教育を結びつける新たな取り組みとして、地域農業の持続的な発展につながるものと多大なるご期待をいただいております。
左:小園町長「この事業を通じて南種子町の農業振興につなげていきたいし、またこの取り組みが種子島全体に広がっていくことを期待」とのコメントをいただきました
次世代を育む「e-kakashi」:小学校での実践的ICT教育への貢献
授業では、データモニタリングの仕組みや、ICTによって変わりつつある農業の姿を小学生にも分かりやすく紹介しました。子どもたちは、真剣な表情で耳を傾けながら未来の農業に触れ、自分たちの「食」についても考える貴重な時間を過ごしました。出題されたクイズにも、児童たちは興味津々で積極的に回答していました。
出前授業の風景。3年生から6年生までの児童合計14名が参加。
その後に行われたフルーツパプリカの圃場視察では、収穫体験学習も実施され、赤・黄・橙の丸々と育ったパプリカを楽しそうに収穫する姿が見られました。収穫したばかりのパプリカをその場で美味しそうに頬張る児童たちの笑顔も印象的でした。
今年は、小学校の温室でも児童たち自身によるパプリカ栽培がスタートします。「同じように大きくて美味しいパプリカができるかな?」と、目を輝かせながら取り組んでいます。
この出前授業は、農家になる・ならないに関わらず、子どもたちがデータを活用して課題を解決する力を育む機会でもあります。将来的には、こうした体験を通じて、持続可能な社会の構築に貢献できる人材の育成につなげていくことを目指しています。
採れたてのパプリカを生かじりして笑顔がこぼれる児童の皆様
おわりに
南種子町では、「e-kakashi」の導入を足がかりに、持続可能な農業と、誰もが「儲かる農業」を目指せる未来を築いていきます。「e-kakashi」はこの挑戦を強力に支援し、地域農業と教育の持続的な発展に貢献していきます。
今後も、この取り組みの様子を皆さまにお届けしてまいります。どうぞお楽しみに!
関連リンク
南種子町のnote記事
https://note.com/minamitane/n/n79120fcf53ec